木毛セメント板の魅力
「木毛セメント板」とはリボン状に細長く削り出した木材を、セメントペーストで圧縮成型した建材のことです。
木毛が繊維補強材となり、セメントで固めることで強度や耐久性を持たせています。
別名「木毛版」「木毛セメント防火版」などと呼ばれ、日本では古くから耐火被覆材・下地材・吸音材などとして使用されています。
木毛セメント板は「木・水・セメントのみ」で作られているという特徴があり、この特徴から健康面や環境面に優れた建材であることがわかります。また、国土交通省から「準不燃材料」と認定を受けており、通常の火災による加熱が加えられた場合に加熱が始まってから10分間は燃焼しないことが認められています。
木毛セメント板は昔から『呼吸する建材』と言われ、湿度が高いときには吸湿し、湿度が低いときには放湿して、部屋の湿度環境を整える性能があると言われています。
木毛セメント板の用途
木毛セメント板は主に以下のような用途で使用されます。
天井材(内装)
吸音性により生活音や反響音を和らげる機能性がある一方、デザイン的にもナチュラルで温かみのある仕上がりになります。
壁材(内装)
リビング・寝室などの壁材として使用すると、調湿効果で結露やカビの発生を抑制することが可能です。また、自然素材を活かして、インテリアのアクセントにもなります。
外装の下地
外壁の下地材としてモルタル塗りやサイディングの下地に使われており、耐火性・断熱性を高めます。
また、屋根の下地材としても使用し、断熱補助や遮音効果、雨音の軽減や、夏の屋根裏の暑さをやわらげる効果も期待できます。
防火下地
防火性があるのでキッチンやガレージ周りなど火気を扱う部分に使用されることがあります。鉄骨造や木造住宅の耐火構造部分の被覆材としても活用可能です。
調湿・断熱が求められる箇所
小屋裏や収納空間に使用することで、湿気を調節して結露を抑え、かびやダニの繁殖を防ぎます。また、断熱性もあるため快適性をサポートします。
収納の他にも洗面脱衣室や水回り周辺など湿気が多く発生しやすいところで使用すると調湿性によりジメジメ感を軽減し、仕上げ材の下地としても有効的です。
家づくりに木毛セメント板を使用するメリットをさらに深掘りしてみていきます。
耐火・不燃性能
セメントが主成分の為燃えにくく上で述べた通り準不燃材料として認められており万一の火事の際にカギになってきます。木毛はセメントで覆われているため延焼を防ぎやすいです。また、有機系接着剤を使わないため有毒ガス発生の心配が少なくなります。
軽量かつ十分な強度
木毛の繊維構造とセメントの結合で軽さと剛性を両立した建材です。コンクリート版に比べて軽く、運搬や施工時の負担を軽減することができます。また、のこぎりやカッターなどで加工しやすく、現場での調整も用意なので様々なことに柔軟に対応できます。
吸音性に優れる
木毛の細長い繊維構造と内部の空隙が、音の反射を抑えて吸収するので住まいの防音対策にぴったりです。遮音材と組み合わせることで、防音性能の向上も見込めます。住まいだけでなく、体育館・ホール・スタジオ・会議室など響きすぎを防ぎたい空間にも最適です。
断熱性
木毛部分の空気層が熱伝導を抑制し、夏の暑さや冬の寒さを緩和してくれます。外壁・屋根・床の下地として使う事で省エネや快適性に大きく貢献してくれる建具になっています。
調湿機能
多孔質構造により湿気を吸収・放出し、結露やカビの発生を抑える効果があります。倉庫や農業施設といった高湿度環境、湿度変化の大きい建物に適しています。
環境配慮
木毛は木材加工の副産物を有効活用しており、廃材削減・資源循環に大きく貢献しています。接着剤・化学樹脂を使わない製品では低VOC※で室内空気室をおs粉いません。また長寿命で再利用もしやすいメリットもあります。
※VOC:揮発性有機化合物の略称で光化学スモッグやシックハウス症候群の原因とされている物質
多用途性
内装仕上げ材、外壁・屋根下地、型枠材、防火被覆材など幅広い用途で利用可能なので、住宅はもちろん公共施設・工場・農業施設にまで対応することができます。
コストパフォーマンス
木毛セメント板は同等性能の防火・断熱・吸音材料に比べて比較的低コストという大きなメリットがあります。さらに防火・断熱・吸音など木毛セメント板1つで複数の機能を持たせられるため、材料の重複が減り余分なコストを抑えることが可能です。
木毛セメント板を使用する際の注意点も併せてお教えします。
1つ目に吸水性が高いという点です。木毛の多孔質構造により水を吸いやすく、屋外や高湿度環境で劣化・反り・カビの原因になりやすいです。外部使用時には必ず防水塗装・透湿防水シート・仕上げ材で保護し、屋根下地に使用する場合はルーフィング材と組み合わせることが大事です。
2つ目に表面が粗く、仕上げが必要という点です。無塗装ではザラつきがあり、粉落ちや見た目のラフさが出ます。クロス貼り、塗装、化粧仕上げで意匠性を高めましょう。あえてラフな表情を活かす場合でも、クリア塗装や防塵処理を行うと清潔感が増します。
3つ目に強度に限界があるという点です。面剛性はありますが、点荷重や強い衝撃には弱く欠けや割れが起こることがまれにあります。防ぐためには荷重や衝撃がかかる場所では石膏ボード・合板との複合使いをする、構造材としてではなく下地材や仕上げ材として適材適所で使用するという事が大切です。
4つ目にセメントのアルカリ性の影響があるという点です。木毛セメント板に含まれるアルカリ成分が、金属部材や一部塗料を劣化させる恐れもあります。そのため防錆処理された金属を使用する、金属との接触部には絶縁シートや防錆塗装を挟むという対策を講じる必要があります。
木毛セメント板を住宅に使うときは、「水に弱い・表面の粗さ・強度の限界・アルカリ性」という性質を理解し、防水仕上げ・複合使用・定期点検でカバーすれば、耐火・断熱・調湿・吸音というメリットを安心して活かせます。
1つで何役もこなせる万能な木毛セメント板を家づくりに使用してみてはいかがでしょうか?